不妊手術をする意味
不妊手術を受けた犬は、メスで23〜26%・オスで14〜18%寿命が長くなるといわれています。
【予防学的な理由】長生きするため
多くの病気の予防や緩和になるため、より健康的に長生きすることができます。
性別 | 予防できる病気 |
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メス犬♀ | 卵巣子宮疾患(子宮蓄膿症、子宮内膜症、子宮がん、卵巣がん)、出産時の産科疾患、偽妊娠、乳腺炎、膣脱 |
オス犬♂ | 睾丸腫瘍(セルトリ細胞腫、間細胞腫)、肛門周囲腺腫、精巣上体腫瘍、前立腺肥大 |
オスメス共通 | 伝染性生殖器腫瘍、糖尿病、クッシング症候群、乳腺腫瘍 |
【遺伝学的な理由】遺伝病をなくすため
近年数々の「遺伝病」が、様々な犬種で認められています。
- 背関節形成不全
- 停留睾丸(陰睾)
- そのほか種々の劣性遺伝子による病気 など
子孫に必要でない遺伝子が伝わるのを防ぐために、計画的な繁殖につとめることが大切です。
【社会的な理由】殺処分を減らすため
たくさんの犬が生まれている半面、毎日多くの犬が処分されています。
過剰繁殖問題や飼主の飼育放棄の問題などを解決するためには、最も効果的であると考えられます。
【行動学的な理由】問題行動を防ぐため
性ホルモンの影響を受けている行動には、他の犬への優位性攻撃行動(イカク・ケンカなど)、尿マーキング、放浪、マウンティングの一部などがあります。
メス犬の発情サイクルが気分にムラを招き、不安行動に影響していることもあります。
不妊手術により、これらの性ホルモンに起因するストレスから開放されて、行動が安定し性質がおだやかになります。
性ホルモンによる行動がある期間続くと大脳で学習されるため、不妊手術では完全に消失できないこともありますが、効果的に軽減することはできます。学習前の不妊手術はより効果的です。
不妊手術をしても、生まれもった性格は基本的には変わりません。使役犬としての能力などへの悪影響もありません。
不妊手術が犬に与える影響
肥満になりやすくなる
術後、ホルモンの変化により基礎代謝が下がり、必要なカロリーが15〜20%減少することがわかっています。テリトリー意識が弱くなることにより運動量が減少するなど、生活パターンの変化も原因となります。
ご家庭で体重管理をしていただければ特に問題はありませんが、体重増加により関節疾患のリスクはあがります。普段からの体重管理が重要です。
尿失禁が増えるって本当?
高齢のメス犬にみられる尿失禁の治療にメス性ホルモンが使用される場合があります。避妊手術を受けた犬の方がこの病気の発生率が高いといわれています。
しかし、術後数年〜10年以上たってから発症することや、尿失禁を起こす犬のほとんどが肥満であることなどから、避妊手術が尿失禁の原因ではなく、肥満や運動不足など神経系統の異常を含む複数の要因が原因であると考えられています。
ホルモン反応性の皮膚炎と不妊手術の関係
性ホルモン反応性の皮膚疾患と不妊手術との関係は証明されていません。ホルモン反応性皮膚炎の本当の原因はわかっていません。
不妊手術は成長に影響を与えるの?
性成熟期前の不妊手術は犬の骨格の成長や体重の増加にほとんど影響を与えないことがわかっています。成長板の閉鎖の遅れにより、わずかに骨が長くなることが報告されています。
不妊手術をする時期
子犬はいつから?
初回発情を迎える生後6ヶ月~7ヶ月が目安です。
メス犬の場合、初回発情前に避妊することで95%の乳腺腫瘍を予防できます。
オス犬の場合、初回発情前に去勢することで、マーキングやマウンティング癖(犬)などの問題行動が軽減できると言われています。
成犬は何歳まで?
10歳を超えても問題なく不妊手術を成功した子もいますが、5歳以上の犬は、より詳細な術前検査を行った方が安心です。メス犬の避妊手術はヒート(生理)を避けて手術を行います。
不妊手術を考えているのであれば、愛犬の体力のある若いうちに手術を行う方がよいでしょう。
避妊手術の場合
不妊手術による犬の乳腺腫瘍予防効果
初回発情前・・・95%
初回発情と2回目の間・・・92%
2回目と4回目の間・・・74%
卵巣摘出時期が2.5年齢を境にその後の乳腺腫瘍発生率は急増します。
犬の乳腺腫瘍のほぼ50%が悪性です。
去勢手術の場合
犬の精巣腫瘍は犬の腫瘍中15%を占め、陰睾や鼠径部停留睾丸では腫瘍の発生の危険が13倍にものぼります。
去勢をしない5歳以上のオス犬の60%は前立腺肥大になるといわれています。
去勢・避妊の流れ
手術の時期については、発情がはじまる生後6ヶ月~7ヶ月が目安です。大型犬の特定犬種によっては適応時期が異なることがあります。
メス犬の避妊手術は、両側の卵巣と子宮を摘出します。
オス犬の去勢手術は、両側の睾丸を摘出します。
1.ご予約
基本的に避妊・去勢手術は予約制となっております。
まずはお気軽にご相談・ご予約ください。
2.事前検査(術前1週間)
手術の約1週間前に、術前検査として身体検査や血液検査、レントゲン検査を行います。検査結果によっては、手術をお見送りする可能性もあります。
3.手術前日
手術前日の24時以降(当日午前0時以降)は食べ物を与えず絶食してください。もし何か食べてしまった場合は、必ずスタッフまでお申し出ください。(水分は与えて頂いて構いません)
4.手術当日
当日はお昼頃に手術を行いますので、午前中のご来院をお願いしております。(ご予定が合わない場合はご相談ください)
5.お迎え
手術終了から5時間ほどで麻酔が切れます。特に問題がなければ当日夕方以降にお迎えいただくことが可能です。
担当獣医師より術後の注意事項等をご説明させていただき、退院となります。
6.抜糸(術後1週間)
傷口が完全にふさがるまではエリザベスカラーは外さないでください。もし傷口が開いてしまった場合は、すぐに担当獣医師にご相談ください。
抜糸時期の目安
- 去勢手術(オス♂)の場合:1週間以降
- 避妊手術(メス♀)の場合:10日以降
術後の注意事項
術後2週間ほどは、よく見守ってあげてください。また、以下の注意事項をお守りいただき、何か異変があればすぐに当院までご連絡ください。
- 食事は麻酔が切れてから少しずつ与えてください
- 傷口を舐めさせない、濡らさないようにしてください
- 術後1週間程度は、運動を控えて安静にしてください
不妊手術の料金
下記料金には、麻酔費用・手術費用が含まれています。
避妊手術♀の費用 | 32,000円~ |
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去勢手術♂の費用 | 22,000円~ |
※犬の場合は、体重によって料金が変動します。詳細はお問い合わせください。
※5歳以降の子や持病がある子は、別途で検査が必要となる場合もございます。
※妊娠時の避妊または潜在精巣の場合は、別途費用が必要となる場合もございます。
よくある質問
オス犬の去勢では、手術以外の方法はありません。
メス犬の避妊では、ホルモン剤の注射や皮下への埋め込みなどの方法はありますが、効果の続く期間が限られており、深刻な副作用も報告されています。
現在のところ、最も安全で恒久的な不妊方法は外科手術のほかはありません。
性ホルモンによる本能的な行動は減少するため、行動パターンの変化はあるかもしれません。しかし、性格が変わってしまうことはないでしょう。
当院では、基本的に日帰りで避妊・去勢手術を行うことが可能です。ただし、事前検査は必要となります。また、担当獣医師の判断で入院いただく場合もありますので、ご承知おきください。
乳腺腫瘍などの治療として手術を行う場合を除き、避妊・去勢手術は補償の対象外となるペット保険が多いようです。詳しくはご契約中の保険会社へお問い合わせください。
まずはお気軽にご予約・ご相談ください。